「休廃業・解散」が過去20年で最多、今後は倒産も増加に転じる恐れA
■中小企業の3.8%が1年以内の廃業を検討
企業は長期的な存続を目指す。だが、2020年の資金繰り支援は一時的な支援策にとどまり、休廃業・解散は増加した。
コロナ禍での企業動向を探るため、TSRは20年2月から毎月、「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を実施している。資金繰り支援は短期的には企業倒産を抑制するが、早晩その副作用が大きな焦点になる。その事態を見越し、8月のアンケートから「コロナ禍の収束が長引いた場合、『廃業(すべての事業を閉鎖)』を検討する可能性はありますか?」との問いを設定した。
8月の調査では、「ある」と回答した中小企業(資本金1億円未満)は8.5%だった。このうち、廃業検討の時期を「1年以内」とする回答が44.9%に達した。つまり、中小企業の1年以内の廃業検討率は3.8%という計算になる。
数値の受け止めについて、TSR情報本部内だけでなく、関係省庁などとも意見交換した。ここで引き合いに出たのは、「雇用保険事業年報」(厚生労働省)による18年度の廃業率「3.5%」だった。
先の廃業検討率3.8%は3.5%よりも若干高いが、それはコロナ禍では「持ちこたえている」と捉えることもできる。ただし、「雇用保険事業年報」の廃業率は事業所単位の集計であり、TSRのアンケートは企業単位(全事業)を対象にしている。事業所の閉鎖は、事業再構築(リストラ)の流れで比較的容易なため、「雇用保険事業年報」の廃業率とTSR集計の廃業検討率を単純比較はできない。
また、TSRアンケートの母集団は、調査員が普段接する事業活動をしている企業が中心で、企業間取引が活発であるなどのバイアスがかかっている。特に、零細の飲食店、小売店は新規参入と退場のサイクルが早く、一般個人を対象としたビジネスは網羅率が低くなりがちだ。
企業倒産を抑制した資金繰り支援は、休廃業・解散にも一定の下支え効果をもたらす。ただ、廃業検討率とその後の議論を踏まえると、2020年の休廃業・解散は過去に類を見ない件数になるとの予想は、8月の段階で確信に変わっていった。
最新のアンケート調査(21年1月実施)でも苦境は変わらない。中小企業の廃業検討率は8.1%で依然として8%を超える水準が続いている。
業種別では、飲食店は37.8%に達した。前月(20年12月)より5.0ポイント悪化し、全業種で最悪だった。再度の緊急事態宣言による外出自粛、時短要請の影響を色濃く反映している。2月3日、10都府県で期間が延長され、飲食店の廃業検討率はさらに悪化する恐れもある。
また、飲食店向けに食材やサービスを提供する企業は全国にある。大消費地の外出自粛、飲食店の営業時間短縮は、全国の企業に影響をもたらすことに目を向けることも必要だ。これら業種は金融・財政両面からの支援が手薄で、今後、経営者の心が折れることも危惧される。
■資金繰り支援による過剰債務で
倒産企業が増加する恐れ
2020年の倒産を抑制した政府による資金繰り支援策は、1年を経過した21年になると意味合いが異なってくる。20年度第3次補正予算では「事業再構築補助金」が措置された。企業の業態転換や再編を目的とした投資に対し、最大1億円を補助する内容だ。一方で、赤字補填や資金繰りを下支えした「持続化給付金」は21年2月15日で受け付けが終了する。
コロナ禍で業績や資金繰り悪化に苦しむ企業を広く支援する政策から、ポストコロナを見据えた生き抜くための企業の取り組みを後押しする政策への転換である。
ワクチン接種の準備は進むが、コロナ禍の収束は見通せない。コロナと必死で戦い、踏ん張っている時期に、コロナ後の支援への転換は時期尚早ともいえる。業態転換や再編は容易ではない。それが出来る企業はリーマン・ショック以降、すでに動いている。
20年の資金繰り支援は、(1)給付型(持続化給付金や家賃支援給付金など)、(2)貸付型(新型コロナ特別貸付やセーフティーネット保証の適用拡大など)、(3)リスケ型(新型コロナ特例リスケなど)の3つに大別された。
このうち、(2)と(3)は債務である。コロナ禍を生き抜くはずの資金繰り支援が、タイミングによっては過剰債務として重くのし掛かってくる。企業を救済した支援策が、廃業と倒産の境界を限りなく近づけたともいえる。廃業を決断した企業が、過剰債務で廃業できず倒産に追い込まれる可能性も現実味を帯びている。
債務整理を含めた抜本再生に向けた動きにも留意が必要だ。ある再生実務家は、「コロナ禍で赤字が続き債務がどこまで増えるかわからない現状では、抜本再生は実行しにくい。ただ、水面下では模索の動きが広がっている。コロナがある程度収束した段階で、こうした動きが一気に表面化するだろう」と耳打ちする。
倒産は政策効果で抑制された。その支援策が変化する時に、ほころびが生じる。21年は流れに乗れない企業を中心に、倒産や休廃業・解散が相次ぐ可能性が高まっている。