天橋立の美観を楽しめる老舗ホテル「北野屋」(宮津市文珠)は、予約が入っている日を除いて1月14日から休業状態が続く。本来なら冬の味覚の王者・ズワイガニ目当ての宿泊客が多い一番の繁忙期だが、営業できたのは計3日にとどまる。若女将(おかみ)の西村直子さんは「できるだけ赤字を少なくするためには、もう休業しかない」と肩を落とした。
約50人の従業員とホテルの存続のため、雇用調整助成金や低金利融資など「使えるものは全て使っている」状態だが、多額の固定費に頭を悩ませる。「施設の規模や去年の売り上げ実績に合わせた支援をしてもらわないと困る」と話す。
今冬の緊急事態宣言の延長決定後、最初の週末となった2月6日午前、天橋立駅周辺での観光客の姿はまばらだった。駅構内にある観光案内所の1月の案内件数は約千件にとどまり、昨年の2割まで落ち込んでいる。
「なんぼ開園しても赤字続き。旅行そのものが『悪』になっていて、『自助』だけで耐えるのは正直きつい」
駅近くのレジャー施設・天橋立ビューランドを運営する山本大八朗社長はため息をつく。同施設は、天橋立の眺望「飛龍観」の「股のぞき」で有名な観光スポット。絶景を満喫できるリフトも今は空席が目立つ。
長引く観光の低迷は飲食店や土産物店にも暗い影を落とす。
天橋立の北側に位置する府中地区は、天橋立傘松公園や古刹(さつ)・成相寺に向かうリフトとケーブルカーが運休中で、近くの店舗も半分ほどがシャッターを下ろしたままだ。
天橋立府中観光会長で、飲食・土産物店を営む井上悦幸さんは「1日6万円の時短協力金は夜営業の飲食店を対象にするもの。昼が中心の観光地では多くの店が受け取れない。売り上げは例年の1割以下だ」と嘆く。
店の存続に欠かせない運転資金も、昨年春の緊急事態宣言の際に金融機関から限界まで借りている事業者もあるといい、「余力は少ない」と明かす。
「国や府、市の行政はコロナ後を見据えた観光地づくりを求めているが、コロナの収束まで耐えられない業者も出てくる。このことは天橋立だけでなく、あらゆる観光地を取りまく大きな問題」。井上さんは強調する。