企業経営者にとって最大の関心事は消費増税の行方であろう。帝国データバンクの中小企業を対象にした「消費税引き上げに対する意識調査」によると、消費増税で「かなり影響を受ける」「悪影響がある」と答えた割合は67・1%に上る。さらに悪影響の中身では、「販売価格に転嫁できない」が40%、「納入価格の値下げ要請」が30%強で、「国内消費は縮小する」とみる中小企業は実に8割以上に及ぶ。
消費増税分を販売価格に転嫁できず、転廃業を余儀なくされる中小企業が増大することが危惧される。しかし、対策がないわけではない。各種の恩典を利用すれば、消費増税の影響を軽減するのみならず、追い風とする道も残されている。
日本の消費税は、生産から卸売りを経て、小売りに至るまでの「各段階付加価値税」が基本で、その根幹の仕組みは、「
仕入税額控除」である。売り上げにかかる消費税額から、仕入れにかかる消費税額を控除した額を納税する。
この仕組みでは、次々に転嫁された付加価値相当分の消費税額を足し合わせれば、最終商品の価格に消費税率を乗じた額に等しくなる。結果、消費者が購入の際に消費税を支払うことで、消費税の最終負担は消費者に行きつく形だ。
しかし、実際には“教科書”通りにはなっていない。理由は流通の過程で転嫁に齟齬をきたしているためで、必要以上の損税や、場合によっては益税になっている。とりわけ中小事業者に認められている負担軽減措置で益税を享受している事業者は少なくない。
中小企業には消費税に関し、(1)
免税点制度(2)
簡易課税制度(3)
95%ルール−という3つの負担軽減措置がある。免税点制度は、年間の課税売上高が1000万円以下の事業者または資本金が1000万円未満で設立2年以内事業者は納税義務を免除するもので、対象企業は、仕入れ先が課税事業者であるかどうかにかかわらず、仕入れに消費税が含まれたとして「仕入額控除」は認められることから「過剰控除」が生じ、益税となるケースがみられる。免税点制度は全事業者の59・3%が適用対象となっている。
2つ目の簡易課税制度は、年間課税売上高が5000万円以下の事業者が、売上高のみに基づいた簡易な納税額を計算できる仕組み。仕入れ額を売上高の一定割合とみなす「
みなし仕入率」を適用できる。
「みなし仕入率」は業種によって異なる。例えば卸売は90%、小売は80%、製造は70%となっている。事務負担の軽減が目的だが、これを利用して、みなし仕入率が実際の仕入率よりも高ければ、仕入額控除の額が大きくなるため、本来の納税額よりも圧縮できる。
3つ目の95%ルールは、課税売上割合が95%以上の場合、課税売上に対応するものか否かの区分を要せず全額仕入額控除を認める制度だ。
3つの負担軽減措置で07年度は5000億円の益税が生じている。これらの措置を悪用するのは論外だが、中小企業が消費増税を乗り切るために知恵を働かせる余地は残されている。