――民事再生法を申請して、銀行や取引先への謝罪行脚の日々となりました。
つい先日まで取引の交渉をしていた相手が突然、民事再生するわけですから、メーカー各社と銀行には支払いが滞り、多大な迷惑を与えてしまいました。
「私たちを騙しましたね」と怒鳴られることもあり、ある取引先では、帰るときに「うちの社員に謝ってくれませんか」とも言われました。お怒りは当然だと思い、先方の事務所の中で「申し訳ございませんでした」と頭を下げました。現場の仕事では感じたことのない苦しさがあって、毎日が本当につらかったです。
――そんな立場になることが予想できたのに、なぜ社長を引き受けたのでしょうか。
ありきたりな言葉になりますが、ビジョンメガネが好きだからです。自分は新卒でこの会社に入り、色々な経験をさせてもらいました。同期や先輩といった仲間も会社にたくさんいます。自分が成長できたのは間違いなく会社あってのことだし、その会社を残すために自分にできることがあるなら、やるしかないと思っていました。
そもそも「会社が潰れる」ということの厳しさが、引き受けた時点ではよく分かっていなかったかもしれません。「なぜ火中の栗を拾ったんですか」と言われましたが、これが「火中の栗」だと理解していませんでした。「これしか方法がないんやろな」と思い、危機をなんとか乗り切ろうとしていただけだったと思います。
■復活できると信じていた
――経営再建に際しては、42の赤字店舗の閉店と、約100人のリストラも行いました。かつての同僚や部下、上司に解雇を告げなければならないというつらい立場になりました。
修羅場も覚悟していたのですが、みなさん静かに受け止めてくれました。おそらく、私が生え抜きの従業員出身なので、「あいつもつらい立場をやっている」と察してくださったのではないかと思っています。
会社に残る社員に対しても、全国の店舗に行き、直接説明をするようにしました。ただ、そのときにはとても冷たい視線を向けられました。期待も憎しみもない“無“の表情です。あれは忘れられません。しかし、それも一時のことで、徐々に会社の業績が回復に向かうと、前向きに仕事に取り組んでいただけるようになりました。
――経営再建に臨む時点で、ビジョンメガネが復活できる可能性は、何%くらいだと思っていましたか。
正直、五分五分だと思っていました。50%より低いとも思いませんでした。ビジョンメガネは事業で悪いことをして、お客様を騙したという理由で、業績が悪化したわけではないからです。創業者がよく「情けは人のためにならず」と語っていたように、「人のためになる商売をしよう」という風土が染み付いている会社なんです。
ただ、ロープライス店の台頭に負けて過剰な安売りをしたり、モノからコトへという変化に対応できなかったりという、戦略で失敗してしまった。本来は真面目な、いい会社で、時代に合った戦略を打ち出せれば復活できるはずだと信じていました。