倒産速報 明日はわが身です。円高の影響で倒産する企業が増えている。
為替相場はひところよりは落ち着いているとはいえ、相当な円高水準にあることに変わりはない。世界的な経済危機をなんとか乗り越えた病み上がりの日本企業にとって、予断を許さない状況が続いており、
円高倒産ラッシュへの不安は依然根強い。
東京商工リサーチによると、今年1〜10月の円高倒産は58件。前年同期(19件)の約3倍となっている。
急激な円高は輸出企業をモロに直撃。今年9月には、
食肉輸出会社アディレクト(京都)が円高などによる業績悪化で破産に追い込まれた。
同じく9月、工作機械の輸出販売を手がける
新栄貿易(東京)が円高が原因で破産。2009年3月期に年商約11億8400万円を確保していたが、急速な円高には勝てなかった。
最近の特徴は、円高になると大きな損失が発生するような
デリバティブ(金融派生商品)を契約した企業の倒産が後を絶たないこと。商工リサーチによると、58件の円高倒産のうち、実に24件がデリバティブによるものという。
たとえば、都内の靴輸入卸会社は、円高になると損失が発生するデリバティブを契約していたため、今年に入り約1億円の損失が発生。「秋以降の商戦で、ブーツ約70万足の予約を取り付けるなど本業は好調に推移していたものの、厳しい資金繰りを強いられている」(関係者)という。
デリバティブの損失で経営が揺らぐケースは、
為替リスクを回避したい輸入会社に目立つ。
都内のある水産物輸入会社は倒産こそしていないものの、損失が毎月数千万円単位で発生、経営を圧迫している。
簡単なあらましはこうだ。同社は06年春、取引のある大手銀行の勧めに応じ、「
通貨スワップ」(5年満期)というデリバティブを契約した。当時の為替水準は1ドル=110円台半ば。契約は、設定レートの103円でドルが買えるというものだった。
相場が103円より円安ならば、相場より安く決済資金のドルを調達でき、同社は得をする。逆に、もし103円より円高方向に振れると、実際の相場より高い価格(103円)でドルを買わなければいけなくなる。
「契約当時は円安傾向にあり、本来ならこのデリバティブで安くドルを調達できるはずだった。しかし、為替相場が想定以上の円高に振れ、とんだ“爆弾”を抱えるハメになった」(関係者)という。
中途解約は膨大な解約金を取られるため、選択はできない状況だ。
「本業は好調でも、過去に契約したデリバティブの損失が経営を大きく圧迫し、ある日突然、倒産に追い込まれるケースが今後も出てくる」(企業法務に詳しい弁護士)とみられている。
現在は1ドル=84円前後で推移。10月中旬から11月上旬にかけて1ドル=80円台に突入し、1995年4月に付けた史上最高値(79円75銭)更新がささやかれていたころよりは落ち着きを取り戻している。
しかし、経済界が望む為替レートは1ドル=90円程度。日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は為替の適正水準について、「感覚的に90円程度だと思う」。三井住友銀行の奥正之頭取もテレビ番組で「輸出を中心とする加工製造業は1ドル=90円前後を望んでいる」と語った。
まだまだドル円相場は企業にとって相当な高水準にある。最後に、今後の円高倒産の動向について、商工リサーチ情報部の橋本邦夫課長はこう指摘する。
「大手企業は海外という逃げ場があるが、中小企業は厳しい。特に東京では、下町の金型を輸出する業者などがダメージを受けるだろう。このままでは、年末、年度末を越せない会社が続出するのではないか」
今後、円高倒産ラッシュが猛威をふるうことになりそうだ。
編集後記
デジタル革命の申し子、ソフトバンク社長の孫正義は19歳のとき、「人生五十カ年計画」を打ち立てた。20代で業界に名乗りを上げ、30代で1000億〜2000億円規模の軍資金を貯める。40代で1兆〜2兆円規模の一勝負をする。50代である程度、事業を完成させ、60代で後進にバトンタッチする──。現在51歳の孫は、この計画をほぼ一直線にひた走っている。
孫は断言する。「偶然による大業はあり得ない」。ビジネスの世界は、偶然だけで何度も勝ち続けられるほど甘くはない。ではどうすれば、「偶然」を「必然」に転換できるか。その方法論を徹底して組み立てるのが、孫の長所である。
資金も実績もない若造が、いきなり大手家電量販店と取引できたのはなぜか。設立2年目のソフトバンクが、全国4600店のパソコンショップと加盟店契約を結べたのはなぜか。誰もが無謀に思うことを孫がどのように突破してきたのか、本書にはそのケーススタディーがいくつも紹介されている。
大不況のさなかで、孫は何を考えているのだろうか。
「わたしから見れば、二十年先、三十年先の未来を予測することよりも、二年先、三年先の短期的なビジョンを見通すことのほうが、ぶれ幅が大きく、むずかしい。いまや世界的に経済が混沌としていて、先が読めない。だからこそ、リーダーは中長期のビジョンを示すことが重要だと思っている」
孫正義世界20億人覇権の野望わたしは19歳のとき、己の人生50ヵ年計画を打ち立てた。20代で業界に名乗りを上げ、30代で1千億、2千億規模の軍資金を貯める。40代で1兆円、2兆円規模の一勝負をする。50代である程度、事業を完成させ、60代で後進にバトンタッチする。この5つのステージを19歳のとき決めて以来、一度も変えていない。わたしがボーダフォン・ジャパンを2兆円かけて買収したのは、49歳のときである。つまり、博打を打つ最後のタイミングだったのだ。偶然による大業はあり得ない。最高経営責任者は、大業に対するビジョンを掲げ、限られた人生を一直線に進んでいくほかない。CEOが、ビッグ・ピクチャーを示すことが全ての鍵になる。孫正義が語る、ソフトバンク最強経営戦略。