感謝の習慣が、いい人生をつくる [ 中井俊已 ] |
東京都港区の寺院。そこでMさん(68歳)は、水曜と日曜の週2日、朝8時から夕方まで時給1200円で働いている。仕事は、墓地や周辺の清掃、あるいは高齢の檀家がお参りに来た際、水を満たした手桶を持ってお墓まで同伴するといった仕事だ。
Mさんは音楽プロダクションの社長を務めた時期もあり、国民的な人気を博した女性歌手を手がけた過去もある。その時期は1600万円で購入した外車に乗り、横浜市に2億円の邸宅も建てた。だが、事業や株に投資しすぎた結果、バブル崩壊とともに全ての資産を失った。
Mさんはそんな半生を語りつつ、「真面目に生きたことがない」「大人になりきれない」と自らを振り返る。お金にも執着はない。現在の年金は月約14万円で、お寺の仕事で得られるのは月額8万円ほど。
毎月の収入は二十数万円にとどまる。マンションの家賃は孫の世話をすることで次女に負担してもらい、それでも生活に足りない分は13歳下の妻の収入で補う。不足を自覚しながらも、あくせく稼ごうとしないのが、いまの暮らし方だ。
豪奢な生活とお金のない生活の両極を経験してきたMさんにとって、「働く」とはどういう意味をもっているのか。
「感謝されるのが仕事ということだね。お寺の仕事は、夕方には泥だらけでクタクタ。だけど、自分を正したい、律したい、とも思っている。奉仕ではないが、近いものはあるかも」
その上で、シニアの働き方とはそうした余裕があるべきだとも述べた。
「生活のために働くのは当然のことだと思う。一方で、老いていく中で、お金だけ、仕事だけに関心を奪われるのも考えもの。働く喜びを感じられる距離感で仕事ができるといいなと思いますね」