この連載ではさまざまな失敗やトラブル、落とし穴にはまるパターンを紹介してきたが、整理すると次のようなことが言えるのではないか。
(1)明確な目的がない これはどんな分野にも言えるが、例えば田舎暮らしや海外ロングステイ。定年後、何もすることがない人は海外へ行っても退屈になり、すぐに日本へ舞い戻る。なぜ長年暮らした町を離れ、よその土地へ行くのか。そこで「何をするのか」が大切ということだ。
(2)業者任せ 例えば自費出版。自分がチェックを怠ってイメージ通りのものができず、値段が高かった、だまされたというケースが多い。
(3)コミュニケーションが苦手 外国へ行っても現地の人を「ガイジン」と呼んでコミュニケーションを避けるような人だ。定年は今までの企業社会のしがらみをいったんご破算にして、新たな分野に人と人とのつながりを求め、新たな人間関係をつくることである。現役時代以上にコミュニケーション能力が問われる。
(4)自分の頭で考えない、命令されることに慣れた人 概して失敗している人の多くは、自我が確立していない。リスクに対する意識も極めて低い。困ったときは誰かが助けてくれるだろう、という甘えがトラブルの原因になっている場合が非常に多い。
(5)井の中の蛙で世間知らず、それでいて自信過剰 人間は年を取るほど頑固になっていく。そうした自信家ほど業者の仕掛けるわなに陥りやすく、おいしそうな話に飛びついて被害にあう。
成功パターンは人それぞれで、先人の事例を参考に自分のやり方を発見していくしかないが、失敗は共通する場合が少なくない。情報がなかったばかりに同じような過ちを犯してしまう。投資をするのなら、金融業界の営業マンと丁々発止やりあうぐらいのノウハウを身に付けてからやるべきで、生半可な知識でリスクのあることに手を出してもやけどをするだけだ。
「愚者は自分の失敗からしか学べないのに対し、賢者は他人の失敗からも学べる」とは経済評論家・勝間和代氏の弁。失敗する人と成功する人の違いは、他人の失敗から教訓を学び取れるかどうかだ。同じ轍(てつ)を踏まないようその分野についての情報を収集し、徹底的に学び研究する。それが定年後の失敗を防ぎ、成功を導くことにもつながる。
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