JR仙台駅前のさくら野百貨店仙台店を運営する(株)エマルシェは、2月27日に自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。
消費低迷や他店との競争激化で、売り上げ減少に歯止めがかからなかった。テナントを除く直営売り場は26日で営業を停止しており、老舗百貨店の突然の閉店に、買い物客や取引先からは驚きの声が上がった。
大手スーパーのマイカル(当時ニチイ)傘下で、東北の6店舗を運営。しかし経営悪化に伴い、2001年に民事再生法の適用を申請し、2002年から現在の店名で運営していた。2005年には石巻市や青森市など5店舗の経営を、分割した別会社に譲渡した。別会社が運営する青森、岩手両県のさくら野百貨店4店舗は営業を続ける。
さくら野百貨店仙台店は好立地を生かし、2006年2月期は売上高193億円を計上。しかし、近年は郊外のアウトレットモールに顧客を奪われたほか、近隣で「仙台パルコ」や「エスパル2」など商業施設の開業が相次ぎ、競争が激化。中古書店大手「ブックオフ」や海外ブランド「H&M」のテナント誘致などでテコ入れを図ったが客足は伸びず、2016年2月期は売上高が79億円に落ち込んだ。
27日朝、営業停止を知らせる紙が同店入り口に張り出され、大勢の買い物客らが驚いた様子で見入った。名取市の主婦(66歳)は「駅前で便利なのでよく買い物に来ていた。本当にビックリ。今までためたポイントがどうなるのか知りたいが、電話が全く通じない」と困惑した様子だった。
同日に仙台市内で開かれた説明会にも、多くの取引先が詰めかけた。流通メーカー担当者は「破産なので納入済みの在庫の回収も代金支払いもできないと説明された。1〜2月分で約50万円の損失になる」と嘆いた。
仙台市長は「駅前の顔として親しまれてきた百貨店で、大変残念。地域経済やまちづくりに影響が及ぶので、土地・建物所有者には有効活用に努力いただきたい」とのコメントを出した。
10月16日午後3時から、約500人の債権者を対象に集会が開かれる予定。