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「大きなスケールで水道事業の企業団を興し、この厳しい時代を抜けようと思っている」
5月31日、太田市役所で開かれた臨時記者会見で、同市の清水聖義市長がこう口火を切った。出席したのは清水市長と館林市の安楽岡一雄市長、みどり市の石原条市長の計3人。県内の首長が顔をそろえて会見するのは異例だ。清水市長は「みんなで力を合わせて小さな政府をつくり、市民に最大のサービスを提供したい」と力を込めた。
会見前に、東部8市町(太田市、館林市、みどり市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)の首長が一堂に会し、企業団結成に向けた「東部水道広域化研究会」の設置に合意した。ある担当者は「これほどの大同団結は、平成の大合併以来だ」と興奮気味に語る。
8市町の給水人口は計45万5千人で、事業収益は計91億円。ただ、水道料金の収入は減少の一途をたどり、一方で、高度経済成長期に建設された浄水場の老朽化により新たな投資が必要なのが現状だ。
行政区域を越えた水道の広域化が実現すれば、現在8市町にある24浄水場(県営も含む)の統廃合による施設の共有化が実現し、建設費用の削減や国の国庫補助制度(水道広域化促進事業)が受けられる。
施設の共有化には、さらなるメリットもある。上から下に流れるという水の原理を応用し、これまでポンプ加圧式で浄水場より高い位置にある住宅などに水を供給していたのを、上方にある他自治体の浄水場から各家庭に給水できるようになればポンプの電気料の削減にもつながる。また、これまで各自治体で行っていた検針や料金徴収などを企業団で一括して行えば、人員削減にもつながるという。
企業団設立までには、各自治体によって異なる水道料金やサービスの格差是正といった問題が山積しているが、清水市長は「目的を一つにして事業を行うのは、とても価値があることだ」と、その意義を強調した。