国土交通省は、6日に発表した平成23年度国土交通白書の中で、震災からの復興が進む東北地方の現状について紹介した。
まず、東北地方の鉱工業生産全体をみると、現在も震災前の水準を下回っているものの、震災後の減産分を取り戻す動きや被災企業の復旧が進み、緩やかな増加傾向にある。業種別では、輸送機械工業は自動車サプライチェーンの寸断の影響で全国的に急落したが、平成23年6月には全国に先んじて震災前の水準まで回復した。鉄鋼業、パルプ・紙・紙加工品工業も、震災直後こそ生産が停止したが、太平洋沿岸部の生産設備復旧に伴い回復の動きがみられる。しかし、食料品やたばこ工業の生産水準をみると、現在も弱含みで推移しており、業種によって明暗が分かれている。
また、東北地方への建設投資は、平成23年度は4兆5,200億円、平成24年度は5兆8,700億円と見込まれている。これにより、東日本大震災からの復旧・復興等に係る建設投資によって、平成23年度に17万4,000人程度、平成24年度に49万8,000人程度の雇用創出効果があると国土交通省は試算。復興関連の建設特需による、経済波及効果が期待されている。
個人消費は、震災後の復旧・復興特需の影響により、百貨店やスーパーなどの大型小売店では、衣料品や食料品が好調に推移。コンビニエンスストアは、復興支援者の需要なども加わり、大型小売店同様に、前年の水準だけでなく全国水準を上回るなど好調に推移している。乗用車は、宮城県で14万6,000台、岩手県で4万台、福島県で5万台が津波により流失したと推計されており、これによる買い換え需要が顕著で、岩手県・宮城県・福島県の新車販売台数と中古車登録台数は前年度を大きく上回っている。
明るい話題がある一方で、課題もある。白書によると、宮城県では建設業等における建設躯体工事の有効求人倍率が6.84倍、警備員などの保安員が11.04倍と高い反面、地場産業である食料品製造業における有効求人倍率が0.50倍と、全国より低い倍率で推移し、求人と求職のミスマッチが明らかになった。
また、観光業は他県からの宿泊者数が、福島県で平成23年3月に前年同月比で約6割減、12月時点でなお前年同月比約2割減だった。宮城県も震災以降前年同月比がおおむねマイナスで推移しており、依然として厳しい状況となっている。
復興特需による影響で好調な業種がある一方で、まだまだ復興できていない業種も多い。震災から1年以上経った今でも、本格的な復興はまだまだといえそうだ。
編集後記
東日本大震災からわずか2日後の解説映像が大評判になり、YouTubeでの再生は125万回を超えました。
それもそのはず、大前氏はMITで原子力工学の博士号を取得、日立製作所で原子力プラントを設計していたのです。さらに国家コンサルタントとしての視点から、復興の財源、エネルギー問題、外交政策など緊急提言します。
なお、大前氏は印税を一切放棄、売上げの12%は被災地救援に寄付されます。まずは私たちから「新しい、もっと強い日本」への第一歩を。
【送料無料】日本復興計画今ほど日本人にとって、全体の冷静な事実認識と、そのうえにたった短期・長期双方の見通しが望まれているときはないだろう。
2011年3月11日、日本を襲ったマグニチュード9.0の地震とそれに続いた大津波、それによる居住区の破壊、工場群の被災、インフラの破断、そして福島第一原発のチェルノブイリ原発事故に並ぶレベル7の災害。この本は、これらの危機・破壊がなぜ起こったかという事実認識と、そのうえにたった短期・長期の復興の道筋を考えてみようというものである。